躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。躁状態では気分が高揚して、お喋り、過活動になり、金銭面ではお金を浪費して大事な財産を失うこともあります。態度が尊大になり、やたらと「でかいこと」を言うようになります。人によっては攻撃的で喧嘩っぱやくなることもあり、そうした場合には入院が必要になります。うつ状態はそれと真逆な状態で、気分が沈み込んで悲観的なことばかり考えるようになり、寝たきりで食事もとらなくなることがあります(逆に過食するタイプのうつ状態もありますが)。
双極性障害に対する薬物療法としては、躁うつの波自体を安定化させる感情安定薬と呼ばれるグループの薬を使います。代表的な薬には炭酸リチウム(商品名:リーマスなど)、バルプロ酸(商品名:デパケン、バレリンなど)、カルバマゼピン(商品名:テグレトール、レキシンなど)、ラモトリギン(商品名:ラミクタール)などがあります。また、新しい世代の統合失調症の薬である、アリピプラゾール(商品名:エビリファイなど)、オランザピン(商品名:ジプレキサなど)、クエチアピン(商品名:セロクエルなど)なども双極性障害で躁うつの波を安定化される作用があることが分かっており、しばしば使われます。
躁状態が強く攻撃性を早めに鎮静したい場合には抗躁作用のある薬(多くは統合失調症の薬でもあります)として、リスペリドン(商品名:リスパダールなど)、ハロペリドール(商品名:セレネース、リントンなど)、ゾテピン(商品名:ロドピン、セトウスなど)、スルトプリド(商品名:バルネチールなど)なども一時的に投与されますが、長期に使っているとうつ転(躁状態からうつ状態に移行すること)してしまうこともあります。うつ状態が重篤な場合には、単極性のうつ病と同様に(「うつ病の薬物療法」の項を参照)抗うつ剤を使わざるを得ないことがありますが、躁転(うつ状態から躁状態に移行すること)してしまうことがあり、注意が必要です。現在のガイドラインでは双極性障害で抗うつ剤を使うことが推奨されていません。確かに躁転のリスクを考えると、感情安定薬だけでコントロールできればそれに越したことはないのですが、うつ状態が遷延している時の患者様の苦痛を考えると、使わざるを得ないこともあります。感情安定薬を併用することで、抗うつ剤を使っていても長期安定する場合も多いです。
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